こんな疑問を解決する記事を書きました。
この記事を読めば『硝酸態窒素の多い野菜の見分け方』や『除去方法』がわかって、硝酸態窒素への不安を解消できますよ。

今回はそんな私が食の安全について学ぶ中で知った、硝酸態窒素の人体への影響や上手な避け方をお伝えしていきます。
私自身、硝酸態窒素について詳しく知ることで、必要以上に恐れることがなくなりました。
硝酸態窒素が体に悪いと聞いて不安になっている方は、対処法がわかって気持ちが楽になると思うので、じっくり読み込んでみてください!
※すぐに解決策を知りたい方は『硝酸態窒素の多い野菜・少ない野菜の見分け方』へ進んでくださいね。
硝酸態窒素の健康リスク3つ

硝酸態窒素とは野菜の成長に必要な栄養素の1つで、根から吸収されて葉などに蓄えられています。

硝酸態窒素は野菜にとって必要な成分ではある一方、人間が過剰に摂取すると体内で有害な反応を起こすことがあります。
ここでは硝酸態窒素の健康リスクとしてよく知られている、以下の3つについて詳しくお話していきます。
- 発がん物質を生成する
- 酸素運搬を妨げる
- 乳幼児はとくに注意
とくに乳幼児は硝酸態窒素の害を受けやすいので、小さなお子さんのいる方はよく確認しておきましょう!
※この項の参考:農林水産省:食品安全に関するリスクプロファイルシート
1:発がん物質を生成する
硝酸態窒素は体内で化学反応を起こして、発がん性物質を生成する可能性があることが知られています。
少しむずかしい話になりますが、どうして発がん性物質が生成されるのかを簡単に説明しますね。
野菜に含まれる硝酸態窒素は、口や胃の中の微生物によって、一部が「亜硝酸態窒素」という物質に変化します。
そして亜硝酸態窒素は胃の中で、タンパク質が分解されてできたアミン類と反応すると、「N-ニトロソ化合物」と呼ばれる発がん性物質を生成する可能性があるんです。

実際にこのような健康被害が報告されている訳ではありませんが、理論上起こり得るリスクとして指摘されていることを知っておきましょう。
2:酸素運搬を妨げる
硝酸態窒素が体内で化学反応を起こすことで、酸素運搬を妨げることも知られています。
先ほどお伝えしたように野菜に含まれる硝酸態窒素は、口や胃の中の微生物によって、一部が「亜硝酸態窒素」に変化します。
この亜硝酸態窒素は血中のヘモグロビンと反応して、酸素を運搬できない「メトヘモグロビン」に変えてしまうんです。
メトヘモグロビンの濃度が10%を超えると、酸素の運搬が十分にできなくなり、「メトヘモグロビン血症」と呼ばれる酸欠状態になります。
とくに乳幼児は上記の化学反応が起きやすいので、硝酸態窒素の多い野菜には気をつける必要があります。
3:乳幼児はとくに注意
硝酸態窒素による健康リスクは、乳幼児に影響しやすいので注意が必要です。
上記でお伝えした硝酸態窒素から亜硝酸態窒素への化学変化は、口や胃の中の微生物によって行われます。
この微生物の活動はpH5以下の環境では抑制されるため、大人の胃では反応が起こりにくいんです。
一方で乳幼児は胃液がpH 5〜7であるため、上記の化学変化が起きやすくなります。

実際アメリカでは、硝酸態窒素を含むほうれん草を離乳食として与えられた乳幼児278人が中毒症状を起こし、39名が死亡する痛ましい事故も起きています。
また日本では硝酸態窒素を含む井戸水を使ったミルクを乳児に飲ませたところ、重度の窒息症状を起こした事故がありました(※)。
チアノーゼによって赤ちゃんの全身が真っ青になったことから『ブルーベビー事件』と呼ばれており、硝酸態窒素のリスクが見直されるきっかけとなりました。
以上のように乳幼児において、硝酸態窒素はとくに深刻な害になり得るので注意が必要です!
※参考:HIRYU・ブルーベビー病とは
硝酸態窒素が多い野菜3パターン

硝酸態窒素が多い野菜には、主に以下の3つのパターンがあります。
- 葉物野菜
- 緑が濃い野菜
- 季節外れの野菜
このような特徴を知っておくことで、硝酸態窒素のリスクを避けやすくなるので、しっかりチェックしていきましょう!
なお記事の後半では『野菜の硝酸態窒素を除去する方法』についてもお伝えしているので、そちらも参考にしてみてください。
1:葉物野菜
硝酸態窒素は葉っぱに蓄積する傾向があるため、とくに葉物野菜に多く含まれやすいです。
以下に農林水産省が伝えている、主な葉物野菜の硝酸態窒素(硝酸イオン)の含有量をまとめたので参考にしてみてください。
| 品目名 | 100gあたりの 硝酸イオン量(mg) |
| 小松菜 | 500 |
| チンゲンサイ | 500 |
| 春菊 | 300 |
| ほうれん草 | 200 |
| セロリ | 200 |
| 水菜 | 200 |
| レタス | 100 |
| キャベツ | 100 |
| 白菜 | 100 |
このような葉っぱ類とは反対に実の部分には硝酸態窒素が蓄積しにくいため、トマトなどの果菜類は含有量が少ない傾向があります。
詳しくはのちほど『硝酸態窒素が少ない野菜』の項でお伝えするので、あわせてチェックしてみてください。
2:緑が濃い野菜
緑が濃い野菜にも硝酸態窒素が多く含まれる傾向があります。
理由は葉の緑色の元になる葉緑素(クロロフィル)と呼ばれる成分が、窒素を材料としているから。
緑の濃い野菜はそれだけ窒素を多く必要とするため、硝酸態窒素も溜め込みやすいんですね。

さらに同じ緑の濃い野菜同士でも、窒素肥料を多く与えられたものは、いっそう緑が濃くなりやすく硝酸態窒素も蓄積されやすいです。
肥料を多く与えられた野菜は色も濃く、大きくて立派に見えるものですが、それだけ硝酸態窒素も多く含まれがちなんですね。
硝酸態窒素のリスクを避けたいなら、緑の濃い野菜には注意が必要です!
3:季節外れの野菜
季節外れの野菜は旬のモノに比べて硝酸態窒素が多い傾向があります。
なぜなら季節外れの野菜は旬のモノに比べて日照時間が短くなりやすく、植物の光合成が十分に行われにくいからです。
光合成が十分に行われないと、根から吸収した硝酸態窒素が植物の成長に使われず、葉などに蓄積しやすくなります。
また季節外れの野菜は、成長を促すために窒素肥料なども多く使われがち。

以上のように季節外れの野菜は、硝酸態窒素を多く含む傾向があることを知っておきましょう。
ちなみに主な葉物野菜の旬の時期を以下の表にまとめたので、野菜選びの参考にしてみてください。
| 野菜 | 旬の時期 |
| 小松菜 | 11〜3月 |
| 春菊 | 11〜2月 |
| ほうれん草 | 11〜1月 |
| 水菜 | 12〜3月 |
| チンゲンサイ | 3〜5月、10〜11月 |
| 白菜 | 11〜2月 |
| キャベツ レタス セロリ |
ほぼ通年 ※品種の異なるものが 季節ごとに場所を変えて 栽培されています |
※参考:旬の食材百科
硝酸態窒素が少ない野菜4パターン

硝酸態窒素が少ない野菜には、主に以下の4つのパターンがあります。
- トマトなどの果菜類
- 葉っぱの色が淡い野菜
- 季節の旬の野菜
- 有機栽培の野菜
このような特徴を知った上で野菜を選んでいくと、硝酸態窒素の摂取量を抑えやすくなるので、しっかりチェックしておきましょう!
1:トマトなどの果菜類
硝酸態窒素は実や根の部分には蓄積されにくいため、果菜類や根菜類は比較的含有量が少ない傾向があります。
以下に文部科学省が公表している、主な果菜類・根菜類の硝酸態窒素(硝酸イオン)の含有量をまとめたので参考にしてみてください。
| 品目名 | 100gあたりの 硝酸イオン量(mg) |
| トマト | 0 |
| きゅうり | 微量 |
| ナス | 0〜微量 |
| ピーマン パプリカ |
0〜微量 |
| スイートコーン | 0 |
| かぼちゃ | 0〜微量 |
| レンコン | 0 |
| ニンジン | 0〜微量 |
| ごぼう | 100 |
| 大根 | 100〜200 |
なお大根やニンジンなどの根菜類でも、葉っぱの部分は硝酸態窒素が蓄積されやすいので注意しましょう。
のちほどご紹介する『野菜の硝酸態窒素を除去する方法』も参考にしてみてください。
2:葉っぱの色が淡い野菜
葉っぱの色が淡い野菜は硝酸態窒素が少ない傾向があります。
理由は繰り返しになりますが、葉の緑色の元になる葉緑素(クロロフィル)と呼ばれる成分が、窒素を材料としているからです。
緑の薄い野菜は濃い野菜に比べると窒素をあまり必要としないため、硝酸態窒素も溜め込みにくいんですね。

また同じ理由からほうれん草などの緑の濃い野菜についても、硝酸態窒素が少ないものは葉の色が淡くなる傾向があります。
そのため緑の濃い野菜を買う際は、あまりに濃い色のものよりは自然な色合いのものを選ぶのがオススメです。
以上のように葉っぱの色が淡い野菜や、自然な色合いの野菜を選ぶと、硝酸態窒素のリスクを避けやすくなります!
3:季節の旬の野菜
季節の旬の野菜は硝酸態窒素が少ない傾向があります。
なぜなら旬の野菜は十分な日照時間や気温など、その種の成長に適した環境で育てられるからです。
成長に適した環境では光合成が活発に行われるため、根から吸収された硝酸態窒素が消費されやすくなります。
結果、使われないまま蓄えられてしまう硝酸態窒素の量も少なくなりやすいんです。

また旬の野菜は一般的に、季節外れのモノに比べると窒素肥料を与える量も少なくて済みます。
硝酸態窒素は肥料を多く与えるほど蓄積されやすくなるので、旬の野菜には少ない傾向があるんです。
以上のことから旬の野菜を選ぶことは、季節や味を楽しむだけでなく、硝酸態窒素のリスクを避けることにもつながります!
4:有機栽培の野菜
有機栽培の野菜は通常の野菜に比べて、硝酸態窒素が少ない傾向があります。
なぜなら通常の農産物には化学肥料などが多く使われるのに対して、有機栽培では有機肥料が使用されるから。
化学肥料が即時に吸収されるのに対して、有機肥料は微生物に分解されながらゆっくりと吸収されていくため、硝酸態窒素の過剰な蓄積が起こりにくいです(※)。

ただし有機肥料といえど大量に使えば当然、硝酸態窒素が作物に蓄積されやすくなるので注意が必要です。
このような注意点もふまえた上で有機栽培の野菜も取り入れていくと、硝酸態窒素のリスクをいっそう避けやすくなります。
以下の記事では『有機野菜の宅配ランキング』を各社を比較しながらご紹介しているので、よければ目を通してみてください!

また以下では『有機野菜のメリット・デメリット』についてお伝えしているので、参考にどうぞ!

野菜の硝酸態窒素を除去する方法3選

野菜に含まれる硝酸態窒素は、以下の3つの調理手順によって量を減らすことが可能です。
- 茹でて絞る
- しっかり炒める
- 塩で漬けて洗う
こういった方法を実践することで、硝酸態窒素の量を30〜50%ほど減らすことが可能です。
硝酸態窒素のリスクを抑えながら、野菜の豊富な栄養を摂取できるので、ぜひ取り入れてみてください!
※この項の参考:農研機構・野菜の硝酸イオン低減化マニュアル
1:茹でて絞る
野菜を茹でてから冷却し、水気を絞ることで硝酸態窒素の量を約50%減らせます。
詳しく言うと以下のように調理の工程を経るほど硝酸態窒素の量は減っていくので、すべてが難しければ1つでも実践するといいです。
- たっぷりのお湯で茹でる:約20%減少
- 流水で冷却する:約20%減少
- まきすなどで水気を絞る:約10%減少
ただしこのような工程を経ると、ビタミンCなどの水溶性の栄養素も減少しやすいので注意が必要です。
やり過ぎには気をつけつつ、緑の濃い野菜など『硝酸態窒素の多い野菜』を食べるときには、とくに実践を心がけてみてください!
2:しっかり炒める
野菜をしっかりと炒めることで、硝酸態窒素の量を約30%減少できます。
ちなみに炒めたときに出てきた水分には、野菜の硝酸態窒素が溶け出しているので、できれば捨てたほうがいいです。
また『農薬・添加物はわが家で落とせた』では、ほうれん草などの硝酸態窒素の多い野菜は、「炒める場合も事前に茹でたほうが安心」と伝えられています。
こう聞くとけっこう面倒だなって思いますよね。

私のオススメは「『硝酸態窒素の多い野菜』はとりあえず茹でる」です。
炒めた水分を捨てるのって実際やってみるとタイミングが難しいので、いっそ「先に茹でてあとは気にしない」という方法のほうが簡単に感じます。
人にもよると思うので、実際にやってみて、自分の継続しやすい方法を取り入れてみてください!
3:塩で漬けて洗う
野菜を塩やぬかみそなどで漬けて水洗いを行うことで、硝酸態窒素の量を約30%減少できます。
理由は、塩などで漬けることで水分と一緒に野菜に蓄積されていた硝酸態窒素が流れ出すから。
また加熱しないため、茹でたり炒めたりする方法に比べて、ビタミンCなどの熱に弱い栄養素が残りやすいのも利点です。

しかも切って塩で漬けるだけなので手間もかからず、日持ちもしやすいので忙しい方にもオススメです。
硝酸態窒素のリスクを減らしながら、葉物野菜のシャキシャキ感も楽しみたい方はぜひ取り入れてみてください!
各国の硝酸態窒素に対する規制

硝酸態窒素には健康リスクがあることから、含有量などについて一定の基準を設けている国もあります。
ここでは以下の3つの国・地域が行っている、硝酸態窒素に対する規制についてご紹介します。
- 日本
- ヨーロッパ(EU)
- アメリカ
国ごとの規制の厳しさや方針の違いを知ることで、日本の取組みの現状も見えてくるので、よければチェックしてみてください!
日本
日本は水道水については硝酸態窒素の基準値が定められています(※)が、野菜については規制がありません。
ヨーロッパのように野菜に基準値を設けない理由について、農林水産省のWebページには以下のように記載されています。
野菜を摂取することの利点はよく知られており、硝酸塩の生物学的利用能において野菜がどのような作用を持っているのかは明らかでなく、(中略)野菜中の硝酸塩量を限定することは適切ではない。
引用元:農林水産省・食品からの硝酸塩の摂取量
簡単に言うと「野菜から得られるメリットは大きく、野菜中の硝酸態窒素が人体にどれくらい影響を与えるかは分からないので、基準値を設けるのは適切ではない」ということです。
このような考えから日本では硝酸態窒素の基準値は水道水のみで、野菜には設定されていません。
ちなみに上記は日本独自の見解ではなく、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で運営しているFAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)による報告に基づいたものです。

とはいえ海外ではほうれん草を食べた赤ちゃんの死亡事故も発生しているため、不安が残ります
そして基準値がないならば、自分でできる対策を行っていくしかありません。
心配な方はすでにお伝えした『硝酸態窒素の多い野菜』や『野菜の硝酸態窒素を除去する方法』などを参考に対策を行ってみてください!
ヨーロッパ(EU)
ヨーロッパを中心とするEU加盟国では、水道水に加えて一部の葉物野菜などについて、硝酸態窒素の上限値が定められています。
またEU加盟国では毎年モニタリング調査を行い、EU委員会に報告することも義務付けられているんです。

ちなみに以下にEUで定められている「葉物野菜などの硝酸態窒素の上限値」をまとめたので、参考に見てみてください。
| 種類 | 100gあたりの 硝酸イオン上限値(mg) |
||
| 生鮮ほうれんそう | 350 | ||
| 冷凍・加工済みの ほうれん草 |
200 | ||
| 結球レタス | 施設栽培 | 250 | |
| 露地栽培 | 200 | ||
| その他のレタス (サニーレタスや サラダ菜など) |
10〜3月 | 施設栽培 | 500 |
| 露地栽培 | 400 | ||
| 4〜9月 | 施設栽培 | 400 | |
| 露地栽培 | 300 | ||
| ルッコラ | 10〜3月 | 700 | |
| 4〜9月 | 600 | ||
| 乳幼児向けの ベビーフード &シリアル加工食品 |
20 | ||
※参考:農林水産省・海外の動向
このデータを見ると、とくに乳幼児向けの食品については、厳しい基準が設けられていることが分かります。
アメリカ
アメリカは日本と同じで、水道水については硝酸態窒素の基準値が定められていますが、野菜については規制がありません。
「野菜に硝酸態窒素の上限値を定めるのは適切ではない」という国際的な見解に、アメリカも準じているということですね。
日本やアメリカだけでなく、EU以外の多くの国では国際的な見解に準じて、野菜には硝酸態窒素の基準値を設けていない様子です。
まとめ:硝酸態窒素は調理と食材選びで減らせる!
上記でお伝えしたとおり硝酸態窒素は健康リスクがありますが、野菜の選び方や調理で減らすことが可能です。
最後にもう一度内容を確認しましょう!
1. 硝酸態窒素の健康リスク
・発がん物質を生成する
・酸素運搬を妨げる
・乳幼児はとくに要注意
2. 硝酸態窒素が多い野菜3パターン
・葉物野菜
・緑が濃い野菜
・季節外れの野菜
3. 硝酸態窒素が少ない野菜4パターン
・トマトなどの果菜類
・葉っぱの色が淡い野菜
・季節の旬の野菜
・有機栽培の野菜
4. 硝酸態窒素を除去する方法
・茹でて絞る
・しっかり炒める
・塩で漬けて洗う
硝酸態窒素のリスクを避けるには、基本的に葉物野菜に気をつけておけばOKです。
野菜選びや調理方法に気をつけることで、硝酸態窒素のリスクを避けながら、野菜の栄養をしっかり摂っていきましょう、
なお上記にもあるように有機栽培の野菜は化学肥料を使わないため、一般の野菜に比べて硝酸態窒素が少ない傾向があります。
以下の記事では『有機野菜の宅配ランキング』を各社を比較しながらご紹介しているので、よければ目を通してみてください!

また以下では『有機野菜のメリット・デメリット』についてお伝えしているので、参考にどうぞ!


